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【えぞ財団:経営者対談】インターステラテクノロジズ稲川社長×サツドラHD富山社長①〜新型コロナの影響と打ち上げ延期の裏側〜

北海道大樹町で日本の民間ロケットとして初めて宇宙空間に到達した観測ロケット「MOMO」を開発したインターステラテクノロジズ株式会社の稲川社長にサツドラHD富山社長がインタビュー。(2020年6月10日取材)

■稲川 貴大:インターステラテクノロジズ株式会社 代表取締役社長。1987年生まれ。東京工業大学大学院機械物理工学専攻修了。学生時代には人力飛行機やハイブリッドロケットの設計・製造を行なう。修士卒業後、インターステラテクノロジズへ入社、2014年より現職。
■富山 浩樹:2015年からサツドラホールディングス代表取締役社長。卸商社を経て、2007年サッポロドラッグストアーに入社。1976年札幌市出身。趣味はジョギング、お酒。

○インターステラテクノロジズが受けた新型コロナの影響と打ち上げ延期の裏側

富山: 僕もずっと注目して陰ながら応援させて頂いていたのですが、直近で言うと緊急支援クラウドファンディングの大成功と、いち早く次の打ち上げが決まるということで、おめでとうございます。

稲川:ありがとうございます。やはり大変ではありますけどね。これから打ち上げようと思っているえんとつ町のプペルMOMO5号機(以下、MOMO5号機)はもともと年末年始に打ち上げようとしていました。当時は機体のトラブルで打ち上げが延期になりまして、年度末は国の委託事業を受けていたこともあり2月3月は難しかったので、改めて打ち上げ時期を設定しましょうということになりました。打ち上げの時期をもう一度設定するというのは結構大変なんです。 関係各所、色々なところに説明しに行って、何十箇所とまわってようやく打上げが出来るものです。年末年始の打上げが延期になったタイミングで、数か月かけて調整に動いて、ようやく次は5月に打ち上げましょうと決まった中で新型コロナウイルスの影響もあり、大樹町から延期要請を受け、さらに延びたという状況です。 やはり苦しいですよね…。
 ロケットの打ち上げというのは簡単には延期出来ないわけです。先ほどお伝えしたように関係各所と入念な調整が必要です。「じゃあ来週にしましょう」という事は出来ないですよね。

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MOMOの打ち上げ画像 ©インターステラテクノロジズ株式会社

富山:船が通らない時に打ち上げをしないといけないとかあるんですよね?

稲川:そうですね。MOMOという観測ロケットは宇宙に到達した後に地球に戻ってきて、海に着水します。そのため、区域内の海面に船がいないときに打ち上げをしています。結構主要省庁とか大変なんです。 外務省とか海上保安庁とか経済産業省、内閣府、一通り届けを出さないといけない。 一部は許認可が必要だったりします。 コロナの影響でこの期間だけは延期して下さいと言われても、次の見通しが立たないとなると数ヶ月全く事業が止まってしまいます。 やはり当たり前ですがベンチャー企業で数ヶ月の期間、事業が止まるというのは本当に死活問題になってきます。でも延期の要請文書が届いてしまったのですが、休業補償なども無かったので、延期の判断と同時にこの困難な状況を乗り越えようと、緊急支援のクラウドファンディングを始めようと思いました。会社が本当に大変だからサポートして貰えないかということで、飲食店の方々もやられている所を見ていたので、うちもやってみたんです。公開まで4 日でページも作り、申請もして、突貫でしたがすぐに公開しました。 CAMPFIREというクラウドファンディングサービスにページを出して1ヶ月間寄附を募ったんです。 そうしたら2400人以上の方から4200万円を超える金額を支援頂けました。コロナで先行きが不透明な中ここから数ヶ月どうしよう?と思って居たところ、これだけの応援が全国から集まり、とても前向きになれました。開発を止めることなく、どんどん進めよう!と社内の空気が変わったんです。ロケットは世界的にグローバルな競争になっていまして、子供の時に習ったような宇宙開発の世界とは全く違うんですね。激しい競争の中なので1ヶ月でも数カ月でも早く事業化出来た者が勝ち、安くていいものを作れた者が勝ちみたいな世界になっているので、次の開発をしない、遅れるという事自体が、会社存続の大きなリスクになります。 

富山:本当にクラウドファンディングの勢いは凄いなと思って見ていました。 実は私も微力ながらクラウドファンディングに参加させて頂きまして、ロケット射場に看板のプレートを置けるリターンを選びました。いつか看板を見に行きたいと思っています。

稲川:是非是非!

○宇宙事業やロケット事業は間違いなく伸びる。地元大樹町との関係性もより強固に

富山:その後もキングコングの西野さんが手を挙げたり本当に凄い勢いで伸びたので皆さんの想いが強いなと改めて感じたのと、私自身もこの事業で凄くワクワク見させて頂いていたので、大樹町にも店舗出させて頂いているのですが酒森町長も存じ上げて居ますし、 凄く残念という想いもあったのですが、でもあれを見るとより大きなエネルギーに変わったんじゃないかなと外から見ていても思いました。 その後のテンションというか、役場の方との関係性も含め今どんな状態でしょうか?

稲川:町長の名前で延期の要請が出たというのが事実ではありますし、打上げに関してはこれまでも町と一緒に対策をしてきて、これでいいですよねと確認を取りながらやっていたため、結構急な話で受け入れるのが苦しいところではありました。 6月に次の打ち上げができることになりましたが、早い時期に次の準備が出来たのは、町長はじめ役場の方が動いてくれたおかげです。大樹町としてもISTのロケット開発・打ち上げは大事な事業だし、クラウドファンディングを見ていて、これだけの人が応援しているプロジェクトだと。北海道とか大樹町だけではなく、全国的な盛り上がりを担っているので、早期に準備しなければ、という流れになった。どうしてもうちのロケットはホリエモンロケットとか言われてしまうんですよね。 それは宣伝として良いところもあるのですが、宇宙事業やロケット事業は今後間違いなく伸びる産業で。日本はポテンシャルのあるところなので、可能性があるんだ、ロケットって打ち上げイベントではなくて、そもそもが宇宙に荷物を運ぶ輸送業だよねというところが、今回の延期をきっかけに改めて多くの人に知って貰えたと思います。 そこは良かったですし、大樹町との関係性も〝雨降って地固まる〟というところです。

富山:僕も今言おうと思いましたが、雨降って地固まるだったんですね。 凄い大変で辛い経験なのであまり言えないですけど、そうなってある意味結果的に良かったというか、関係性や皆さんに伝わるという意味では良かったですかね。

稲川:勿論マイナスが無いわけではないので、大変ではあるのですが、今後の事業の進めやすさで言うと、マイナス面ばかりでも無いなと思えます。

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クラウドファンディング【新型コロナに負けない!】
インターステラテクノロジズは宇宙開発をあきらめない!!

○企業秘密の打ち上げ関連データを公開!宇宙を身近に感じてもらい「みんなのロケットにしたい」

富山:次のロケットは、クラウドファンディングで支援した2400人の方は今までより当然注目して見るし、仲間が広がる感じがしますよね。

稲川:そうなんですよね。僕の元々の想いとして、ISTのロケットはみんなのロケットにしたいと思っていたんです。ロケット開発とか宇宙産業ってこれまで国家の威信とか税金を掛けていたという理由があり、何だか凄いものというイメージがついているんですね。 これはみなさんの頭に染み込んでいて宇宙というとやっぱり凄い、ワクワクしますよね。 日本が初めて人工衛星を打ち上げてからちょうど50年経つんです。 この50年掛けて熟成というか染み込んできたものなんですね。 ですがそれは逆に言うと凄いものになりすぎているなとも思うんです。ここのハードルを下げたいとずっと思っていて、そのためにクラウドファンディングとかスポンサーを沢山募ってみたり、面白い企画があればと色々なところに声を掛けたりしていて、宇宙を身近に感じてもらえるような取り組みをしています。みんなの想いが集まって、みんなで宇宙を目指そうと。あとはユニークな取り組みでいうと、打上げに関するデータの公開もやっています! データってふつうは見せないんですよ、企業秘密なので。 通常は過剰なくらい秘密にしてしまうんですよね。 国家安全保障的に一部は非公開も必要ですが全部を隠す必要は無かったりするんです。 これまでの閉ざされた宇宙開発とは違って、私たちは開かれた開発をやっていこうと思っています。例えばペイターズドリーム MOMO4 号機の打ち上げたテレメトリー(機体から無線で飛んでくるデータ)の生のデータを全部GitHubとかにあげているんです。

成田:凄い。

稲川:図面は全部は公開できないですが、ざっくりしたCG、3Dのモデルみたいなものも GitHub上にあげていたりしています。詳しい方には打上げデータの情報公開や論文を出したりしていますし、クラウドファンディングやファンクラブなど一般の方々に知って貰おうという取り組みもやっています。ロケットの研究開発に多額の費用がかかるので、リソースは限られている中での広報活動ではあるんですけど、広く多くの人に弊社の活動を知って欲しいなと考えています。

富山:身近なものにしてオープンにしてということですよね。

稲川:そうです。そうです。

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社内の作業風景。かなり手作業

○宇宙産業における”官と民”、日本とアメリカにおけるフラッグシップの違いとは?

富山:先程の宇宙やロケット=凄いものとう話ですが、僕も凄いものという植え付けでこの間のスペースXの有人飛行とかの成功も、SFの世界に来た!って夜中ワクワクしていたのですが、アメリカは国家が関わって国ごととして凄く見たいなことも記事で拝見したりしたんですけど、この辺は大樹町の話にもありましたが、国や地域の関わり方ってアメリカと違い日本ならではであるべきだみたいなのはあるんでしょうか。 

稲川:やはりアメリカは国家的にやっています。 元々歴史的な話をすると、アメリカも元々宇宙予算をそんなに掛けて居なかったんです。 ソ連の方が掛けていて、ソ連は何故かというと、ミサイル開発と同時並行でやろうということで、ソ連の方が先に進んでいました。 スプートニク・ショックというのがあって、アメリカが宇宙開発で負けていると初めて気づいたタイミングです。これはいかんということで、当時冷戦時代だったから軍事費の一部を宇宙予算に切り替えました。 宇宙予算というのは子供たちの教育に向いたり技術の派生、そこから一般産業に普及するみたいな効果があるので、ミリタリーよりもいいでしょうということで、軍事予算だったところが宇宙開発に振り分けられていたんですね。その流れがあるので、アポロ計画の時に多額の予算を掛けていた頃からは今グッと下がっているのですが、それでも日本のまだ10倍くらいになるというのが現状です。 (日本は)1/10くらいの予算感で宇宙開発をやっています。 ただミリタリーという要素はあまりなくて、やはりサイエンスや教育、科学技術、産業そういうところに貢献しようというのが日本のモチベーショ ンですね。日本で一番有名な宇宙プロジェクトは最近だとはやぶさでしょうか。純粋に太陽系の成り立ちを調べる為にサンプルを持って帰りましょうというプロジェクトですね。アメリカの場合、ISS(国際宇宙ステーション)にアメリカ人を送ることで宇宙空間はアメリカが大きくカバーしているんだ、というメッセージがありそうです。それがアメリカのフラグシップだし、一方で日本のフラグシップは、はやぶさみたいに小惑星に行くみたいなところに向いていますよね。ただ、アメリカの方が産業という目線はあるなと思います。 予算も大きく、NASAだけでも大変すぎるので、早く民間に出さないと。 日本の場合は、予算規模がある程度少なくて自分たちで抱えられる範囲なので民間へ投げる、というよりは自分たちでやろうよという話でした。 アメリカは、10年15年くらい前から色々な民間の会社に我々が市場を作るので、ロケットを買います、サービス提供してくださいということで1990年代からずっとNASAが民間企業に働きかけていたんです。 ロケット開発をNASAが主導するのではなく、民間にやらせようと。 90年代からやっていたというのは凄いことですよ。 最初の10年間は正直成果は無いが、民間にお金を投じていた。 それがあまりぱっとしなくて、民間のベンチャー企業が何百社とあったところが殆ど潰れて、継続的にどんどん生まれていってという、新陳代謝を繰り返していました。 そういうのをずっとやっていて30年が経って偉大な成果としてスペースXクルードラゴン有人飛行が成功しましたという文脈があるんです。 それに対し、日本は民間でやるという動きに気がついたのが遅かった。僕らがインターステラテクノロジズを始めたのは2013年からなのですが、2013年はまだそのような動きが全然無くて2016年、2017年と正直ここ2、3年の話なんです。 ここ30年とここ数年の日本を比べてしまうと現状の違いが見えてくる。 日本も気が付いてはいるし、民間を巻き込んでやりましょうという文脈が文科省など色々なところに出てきました。堀江さんが言うのが一番強いですけどね。 僕も北海道庁や国の官僚の方とかにコツコツとロビイングして徐々に変わって来ました。 あと10年すると日本の宇宙開発という景色もかなり変わってくるかなと思います。

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インターステラテクノロジズの仲間たち

次回に続きます〜!!

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